流域Kids 生き物から知る流域環境学習2016第7回 最終回「干潟の生き物と役割」
流域Kids 2016も今回で最終回。
遂に、干潟までたどり着きました。冷たい源流だった川は、大河となって潮風の中を流れていきます。
雨の多い今秋、この日も断続的に雨が降ります。やれやれとも思いますが、雨が低いところに集まって川となって、生き物を生かしていく、ということを学んでいるわけですから雨を忌避する理由はありません。安全面には配慮しますが、 命の源を避けて環境学習もないでしょう。
最終回のフィールドは木曽川の河口部。干潟です。
干潟は海面の潮位変化に伴って現れる、川底のこと。海からの海水と川からの淡水が混ざる汽水域の周辺です。
フィールドの場所はAQMAPから確認できます(パソコンで閲覧してください)。
▶︎ http://www.aqmap.info/ui/map/map#1384914304
汽水域や干潟には少し海水の混じった環境を好む生き物が棲んでいます。
グチャグチャのドロドロ。不意に30センチ以上足が埋まってしまうことも。引っ張ってもらわないと抜けられません。。
干潮のタイミングだったので、徐々に水が引き、干潟が姿を表します。
地面できた無数の穴。カニが潜んでいます。
では、採れた生き物をご紹介。
多くの生き物は、水草や落ち葉の朽ちたもの、生き物の排泄物や死骸などが細かくなった「デトリタス」を食べています。干潟は本来は川底ですから、つまり干潟はデトリタスや泥が堆積した場所とも言えます。
俗にドブと言われるところでは腐臭が漂います。それがヘドロです。堆積した泥のそのまた底の泥が空気に触れることなく「嫌気化」することによって発生する腐臭です。
干潟は土砂やデトリタスが最終的に溜まるところですから、本来であればヘドロの匂いに満ちているはずです。そうならないのは、上に挙げた生き物やゴカイ、微生物などの様々な生き物が、泥の中のデトリタスを食べる行為を通じて、泥の中に空気を送り込むことによって嫌気化を防いでいるわけです。そしてそう言った生き物を狙って鳥や大型の捕食者も現れます。
山から川を通って運ばれてきた様々なものの集積地である河口部には、やはりそこを住処とし、糧とする生き物が適応しているのです。それらの生き物によって環境が保たれているのです。
これまで流域Kidsでは全7回に渡って、木曽川流域を降ってきました。様々な景観とそれに対応した生き物を探して、採って、育てて学ぶことで「流域」というものを感じて欲しいという願いからです。
私たちは本来的には、名古屋市に住んでいる、岐阜市に住んでいる、のではなく「庄内川流域」に住んでいるのだし、「木曽川流域」に住んでいるのです。
水が高いところから低いところに流れる、と言う自明の理によって大地は形成されています。山に降った雨は低いところへと流れ、集まって川となり、さらに低い海に向かって流れつつ様々な生き物を生かし、人間社会の文明を支えています。そして海へと注いだ水は再び雨となってゆく。この水循環の単位こそが流域です。
ですから、流域は川とだけ結びついているものではなく、流域内の全てと繋がっているものなのです。
しかし現実は流域を無視して行政区は分けられているし、行政システムは縦割りと言われるように連携せず画一的、点的です。それをベースに防災、一次産業、生物多様性、水資源を論じるから無理が生じてしまうのです。大学の教育も同じような学部の構成です。流域はそれらすべての分野を横串で貫く思考です。
私がよく言う「川は血管、水は血液」という言葉は、まさにその意味で、流域という体の隅々に巡らされた川(血管)によって水(血液)が運ばれることによって、流域は健康体で居られるわけです。
体のどこかに症状が出れば、すぐに血液に影響が出て、体中を巡っていくのです。血管を見れば血液を見れば、体の、だから流域の状態がよくわかります。
また、河原にゴミが散逸し、誰も川に関心を持たず、人が見向きもしない川があれば、周辺の人間社会のコミュニティーも病んでいると言えます。
子供たちには、人間の文明や自分たちの生活が、川や生き物に影響を及ぼしていること、また、川や生き物の存在に依存して生きている事を学んで欲しいのです。
人間もまた流域で、川の、水の恩恵で生かされている生き物の一つである事を知って欲しい。自然と人間を対立軸で考えるのは間違いです。同じところにいるのです。まずはそこからわからなければ。
ありがとうございました。また来年。
伊藤 匠
※流域Kidsはモリコロ基金の助成対象事業です
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